醜さを誇る鬼のように走れ 源氏名はお前の名前で
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源氏名はお前の名前で

父と離婚後の母は、すぐに生活に困窮した。


離婚時、

住んでいた駅前の家を売却し、借金を清算したあと、山分けして、

母は建売住宅を購入しても、金は幾らかは残ったし、


自分のパート代と、

父から送られるはずだった養育費とで、

何とか生活できるだろうという甘い目論見は全くのご破算で、


はっきり言えば、考えが甘いのである。


パートは、新任の支店長が母を嫌い、いじめられて解雇とされ、

奔放な父は養育費など送るわけもなく、また行方不明になり、

生きるのに必要な金は、手に入らなくなった。


妹の小学校の同級生に「紅花会」の社長がいた。

「紅花会」は、所謂の、酌婦派遣業の会社である。

温泉旅館などの宴会興業の際に、宴会元が旅館にコンパニオン、つまりは酌婦を頼む。

旅館は酌婦派遣業の会社に電話して、酌婦を指定の人数、派遣してもらう。


母は日銭欲しさに、妹の同級生の母親に頼み込んで、酌婦として使ってもらった。

宴会を楽しむ客にビールをつぎ、おだて、世間話をして、愛想笑をする。


今、思えば、立派なプロの仕事だと思う。

一時の気晴らしに、酒に酔う客を楽しませる。

何も、コンプレックスに思うことはない。


ただ、母は、水商売を蔑んでいた。

私が幼い頃は、夜に髪をとかすことをまで忌み嫌った。

水商売の女のようだからやめろと叱った。


母は、イヤだったんだ。

酌婦が、イヤだったんだ。

イヤな仕事をしなければならないのは、自分のせいで、子どものせいではないと思うけれど、

母は、私のせいにした。


子どもを育てるために、衣食住のために、金が必要で、だから、酌婦として出ると思っていた。


母は私を責めた。

泣いて責めた。

「源氏名はお前の名前にしてやる」

と言った。


それで少しだけ、気が晴れたのだろうか。

母は宴会場では、私の名前で呼ばれ、はいと返事をし、酌をしたのである。

母は何度も私に

「源氏名はお前の名前にしてやる」

と言った

「わかったか」

と言った。


何と答えれば良かったのか。


ごめんなさい、か、

ありがとう、か。

ざまあみろ、か。





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