醜さを誇る鬼のように走れ 相澤に男を学ぶ
FC2ブログ

電電公社の相澤に男を学ぶ

相澤(仮名)(以下仮名表示略)のことを書く。
相澤は母の男だった人。
紅花会の酌婦時代の母と知り合い、意気投合し、つきあって、
母が小さなスナックをはじめる時に保証人になった人。

この男は、無知で、想像力の欠ける、思いやりのない
最低な人間だった。

今、まだどこかで、のんきに暮らしているだろうか。


いいだろう。
そんな人間もいて世の中だ。
相澤のおかげで私はだいぶ学習した。


母の経営するスナックから、よく二人は喧嘩しながら帰ってきた。
相澤は酔っている。
居丈高に威張る。
ろれつがまわらない千鳥足は醜い。

私を呼んだ。
「お前は誰のおかげで飯が食えていると思うか。俺のおかげだ。
 俺は保証人になってやっているんだ」
相澤は何を求めているのか。中学生の私にどんな返答を期待しているのか?

女に誉めてもらいたい、賞賛をもらいたい、駄々っ子なのか?


相澤は50代前半、私は中学三年生だった。
中学三年生に何を言えというのか?

私は彼のそんな子供っぽい言葉は許してやれても、
どうしても許せないのは、
私の進路にまで口をはさんだことである。

私は、母の水商売を見て、女が地に足を付けて生きる術として、
何か手に職をつけたらいいのではないかと考えた。
そこで私は、小学生のころから裁縫が好きだったので、裁縫で身を立てたいと考えた。
不器用だけれど、一生懸命練習すれば、何年かすればきっと、
技術が身に付くのではないかと希望を持った。
普通高校では無く、和裁の専門学校に行きたいと、私は母に言った。

当時の地方都市山形では、和裁の専門学校とは、普通高校に行けない
成績の悪い娘が行くところという偏見があって、
母は困惑し、相澤に相談したらしい。

ある日、私は酔って家に来た相澤に呼ばれ
「技術なんて、企業に入ってから研修で身につけるものだ。
 お前は考えが甘い。ダメだダメだ」
と言われた。母も
「和裁なんかで食っていけるものか。バカ」
と言った。


相澤は、電電公社に勤めていた。そして、家では相澤の両親がさくらんぼ畑をやっていて
羽振りが良かった。
母子家庭の中学生の娘が自活のために考えた案を笑った。
そして母はそれに同調し、私を責めた。
私は、どうにもできなかった。

私は、母が命令する市内の進学女子高に進学した。
言う事を聞かないなら、金返せ、離婚の時、別にお前を引き取りたかったわけじゃない、
義務で育てているんだから。
母はそう言った。


その後も母と相澤の恋愛は続いていた。
相澤の本妻からの度重なるいたづら電話に電話番号を変えても、
母は何を相澤に求めたのか。


相澤と母はよく金のことで喧嘩をしていた。
一緒に寝た旅館の枕元に置いた相澤の財布から
母が金を抜いたとか抜かないとか、
証拠も無いようなそんなことで、醜く争っていた。
相澤は母を泥棒となじって、返せと迫った。
母は取ってない取ってないと反抗した。


どこまで続くかわからない堂々巡りの口論は、やがて相澤の酔の眠気で終わる。
私は、一部始終をよく聞いた。


相澤よ、お前、愛人が自分の財布から数万円抜いたとしても、
黙って抜かせてやれ。
知っていて知らないふりをしてやるのが、遊び人の男ってもんだろう。
それを責めるなら、母を愛人とするな。
引け。


私は、相澤を知り、こんな男は御免だと思った。
母は、男を見る目が無い。でも、私はそんな母を見てきて、男を学んだように思う。

私は、私が男の財布から金を抜いたとしても、文句を言われるような女にはなりたくないし、
文句を言うような男とはつきあいたくない。


電電公社の相澤。
下の名前は知らない。






ランキングに参加しています。よろしくお願いします。

にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
にほんブログ村




スポンサーサイト



テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

星 あかり

Author:星 あかり
****
ご訪問、
ありがとうございます。
自分の記憶などを
書きました。
****

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
ようこそ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR