醜さを誇る鬼のように走れ チョコレートを投げる
FC2ブログ

チョコレートを投げる

母は「栄養のバランス」という感覚の無い人だった。

食べてしまえば無くなってしまうものに、

注意をはらうのはばかばかしいという考えの人だった。


幼いころの食事は、

「ご飯+ふりかけ」「ご飯+ピーナツ味噌」「ご飯+味噌汁」、

必ずこの三種類のうちの一種類だった。


それも、日に三度というわけではなく、一度だったり二度だったり、適当だった。

幼い私にはそれが当たり前で、特別にどうこういう感情は持たなかった。

3歳くらいだったろうか。

母が気まぐれに与える食事を、私は静かに食べた。


しかし、たまに、だが、チョコレートを食べられるときもあった。

家に母の知り合いが来ると、母は、隠しておいた板チョコを私に投げつけるのである。

池の鯉に餌を与えるように、ポンと私に投げつけるのである。


「ああ、これで、うるさくなくなる。お喋りに邪魔が入らない。

チョコレートってのは便利なもんだ、食ってる間は静かだからな」


母は大満足顔でそう言い、知り合いとお茶飲み話を始める。

私は足元の板チョコを拾って食べ始める。


私は、うるさい子どもであっただろうか。


うるさいか、うるさくないか、そのことよりも、

チョコレートを投げられる屈辱に、母が私をうるさいと判断している屈辱に、

泣きたい気分になった。


でも、食べた。言葉は何も発しないで。

チョコレートはおいしかった。


私は、プライドを捨てて実を取ることを学んだ。

もし反抗して争いになればチョコレートを食べられないことにもなりかねない。

そうしたら、空腹の苦しみがやってくる。






スポンサーサイト



テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

星 あかり

Author:星 あかり
****
ご訪問、
ありがとうございます。
自分の記憶などを
書きました。
****

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
ようこそ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR